久しぶりの事故患者

本日の患者さんは40代前半の方です。
別件のオペを予定があったため、その準備をしていたところの急患でした。
ここ最近、担当地区での大きな交通事故はなかったので、久しぶりの事故患者だな~と思いながら救急車からの連絡を確認。

本日の急患に対応できる外科医を確認すると、H先生でした。
腕はいい先生なのですが、経験がやや少ないため、ベテランの先生がサポートされることになりました。
私もオペの補佐に入ることになりました。

患者さんの状態

救急車到着。
どうやら、山道をオートバイで走行中に転倒したようです。
原因はわからないですが、救急隊の印象ではどうやらタイヤがスリップしたとのこと。
CTで調べたところ、全身の打撲痕もさることながら、重症と言えるのは肋骨が3本折れていたことです。

それに加え、肺挫傷。
これが一番きついかもしれません。

内出血を伴う肺挫傷、これが命にも関わる場合があるんですよ。
肺が損傷したことによって肺から空気が漏れ、血液も漏れ出すから苦しいはずです。
おまけに、広範囲の挫傷だったので、早急かつ的確な対応が必須でした。
周りの心配をよそに、H先生は診断、処置共にその時点でベストな判断をされたようです。

早速診断にそって処置が始まりました。
胸腔ドレナージの出番です。
胸腔ドレナージとは胸腔内にたまった液体(血液)を、ポンプを使って体外に排出するための装置です。
(※余談ですが、このポンプが金魚などの観賞魚の水槽に酸素を送るために使うポンプと同型の物を使用する場合もあるため、
病院内では患者さんから『ブクブク』と呼ばれていたりします。)

このような症状とは裏腹に、実はこの患者さん、救急隊から聞いていた内容から想定していた症状ほどではなかったのです。
バイクの転倒からの肺に水がたまるほどの衝撃なら内臓にダメージがあってもおかしくないレベルの外傷をイメージしていたのですが、
幸いというか奇跡的というか、なんとその他の臓器は全くダメージを受けていなかったようです!

事なきを得る

その後の処置で内出血はかなりあったものの、血液のストックもあったために無事輸血をすることが出来、事なきを得ました。
とはいえ、今回のケースでもあと30分から1時間遅れていたら危なかったと先生がおっしゃっていました。
ライダーの皆さん、事故は思わぬタイミングで訪れます。
難しいかもしれませんが、出来る限りお気を付け下さいね。
この続きはまた次回に。