医療に携わる者として、普段から医療をモチーフにした小説やテレビドラマなどはなるべく目を通すようにしています。
あくまで創作の世界ですから、時には声を大にして突っ込みたくなることもありますが、そこはまあ創作ということで楽しみながら観るようにしています。
私は医療系のマンガも好きなのですが、ここではDr.コトー診療所をご紹介します。

ドラマにもなった名作

Dr.コトー診療所は比較的新しい作品ですし、テレビドラマにもなったのでご存じの方も多いのではないでしょうか。
私はドラマも見ましたが、やはり山田貴敏先生の原作の方が好きですね。

医療系のマンガはあまりヒットしない、と言われますが、この作品はコミックスがなんと1000万部を超える大ヒットとなりました。
当時、私の周囲の人間もみんな読んでいた気がします。

ちなみにこの作品ですが、モデルが存在することをご存じの方は少ないかもしれません。
鹿児島県の下甑島で30年に渡って離島医療に携わってきた瀬戸上健二郎医師をモデルとして制作された作品だということです。

物語は離島に赴任した若いドクターと島民とのコミュニケーションを中心に進んでいきます。
それまでその島にはあまり良い医師が来たことがなかったため最初は歓迎されていなかったのですが、もともと技術も知識もある医師だった彼は島民を数多く救いながら信頼を集めていく、というお話です。

もし自分が同じ境遇だったら、ということを当時は何度も思いましたし、共感できる部分もたくさんあって時には涙しながら読んだ記憶があります。
医療系マンガの中では傑作と言って良いレベルの作品ではないでしょうか。

現実的な話として

実際に離島医療に携わったことがないため私自身が言えることはないのですが、もしドクターコト―と同じような境遇に陥ったらあそこまで尽くせることができるかどうかは微妙です。
恐らく、これは多くの医師が同じことを口にするかもしれません。

作品の中のドクターコト―はプライベートを捨ててまで医療に尽くしていますし、それを良しとしている部分もあります。
しかし、ドクターとは言ってもやはり人間ですから、プライベートをすべて破棄してまで医療行為を続けるというのはムリがあるかもしれません。

もちろん、その姿勢は素晴らしいものだと思いますし、あれこそが聖人と呼ばれる医師本来の姿なのかもしれませんが、現代の医師にあそこまでのことができるかと言ったらやはり疑問が残ってしまいます。
最初は私も「創作だから」と思って割り切って読んでいたのですが、最初にお伝えしたように実はモデルとなった方がいると聞いて驚いた記憶があります。
作品と異なる部分はあるかもしれませんが、それでもモデルになるほどの医師が存在したということはとてもすごいこと